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     【:εω    ナオトがベッドから這い出したのは、間もなく正午になろうかという頃だった。    高校に入って一人暮らしを始めたナオトは、料理上手には程遠いまでも最低限の自炊はできる程度の調理技術があったが、腹を空かせた彼はとにかく手早く何か腹に入れたかった。    戸棚の横に無造作に置かれたビニール袋からカップめんを取り出し開封し、湯を沸かすべく水をやかんに注ぎ始めたところで呼び鈴が部屋に響いた。   「今日はよく邪魔の入る日だな…」    どうせ新聞の勧誘かなんかだろうから追っ払おうと、ノブを回すと一拍ためてから勢い良くドアを開け、不機嫌さをこれでもかと固めた顔を訪問者に向けた。   「わわっ!」    思ったよりも低い位置から聞こえた声に、ナオトは視線を巡らせると、尻餅をついた小柄な少女の姿があった。   「…っ~痛ぁ~い」    ナオトの顔が奇妙なものを見る目に変わる。    涙を滲ませ、尻をさすりながら起き上がる栗色の髪の少女は、黒のエプロンドレスにヘッドドレス、いわゆるメイド服を着用していた。    これだけでもかなり痛い娘だが、そのヘッドドレスの横からは獣じみた耳が顔をのぞかせている。   細い首には角張った鈴を付けられた首輪をはめていた。    コスプレかなんかだろうが、二次元を愛するナオトとはいえ、そういう趣味の友人はいない。   「あ、すみません、松坂ナオトさんで間違いないでしょうか?」   「えっ? ああ、そうですが」 
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