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 危うくモモの肉を口から出しそうになったが、間一髪で    鼻で息を整えながら見やると、深いドレープから覗く白肌の傷からはほとんど出血はなく、徐々に、しかし見てわかるほどの速度で塞がりつつあった。    モモのムネ肉(?)は脂身の弾力がありながらも、噛むうちに身が舌の上ではらはらと解けて、生クリームにも似たミルクのような甘味と優しい口当たりがする。    シノがトロに例えたのも納得できる食感だ。    時間にして10秒ほど経っただろうかという頃に、ナオトは肉を飲み込んだ。   「……え…と、どうでした?」   「すげー美味いわ」   「ほ、本当ですか!?」    不安げだったモモの顔がパッと華やぎ、至近距離でその眩しさに晒されたナオトは、たじろぎながらも頷いた。    調理どころか味付けもされていない肉を、これほど美味しく食べられるとは、ナオトも予想外だった。   「良かった…もしお口に合わなかったらどうしようかと…」   「それよりごめんな…あんなに声出したり、俺の頭抑えるぐらいだから、すごく痛かったんだろ?」   「……あ! いえ、あれは…その痛いとかじゃなくて…えっと、ですね」    言いかけて、ようやく熱が引こうとしていたモモの顔が真っ赤に染まる。    誤魔化すように手を振って痛みを否定する様を見て、痛くなければなんなのかとナオトはモモのこれまでの発言を思い返した。   「まさか……気持ち良かったのか?」    紅潮しきった顔を下に向けたまま、モモは小さく首肯した。    いじらしいモモの姿に、言ったナオトまで顔を赤くさせた。    口にこそ出せはしなかったが、ナオトは見た目じゃなくモモのその心根を『めちゃくちゃ可愛い』と思わざるを得なかった。
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