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「そっか…いや、痛いとか嫌じゃなければ良かったよ。  …そろそろ帰ろう」   「……はい!」    照れくさくて返事を待たずに歩き出したナオトは駆け足で追いついたモモが横に並ぶと歩調を合わせた。    ナオトとしてはそれとなく合わせたつもりだったが、モモはすぐに気付いた。    ジャケットをかけ直しながら、胸の奥がぽかぽかと暖かくなるの感じた。    横顔を見つめるモモの顔も自然と綻ぶ。   「んほぉっ!」    ポケットから突然伝わってきた機械的な振動に驚いたナオトの口から、間抜けな声が漏れ出した。    慌ててスマートパッドを取り出し、発信者の名前を確認すると一息ついてから通話を開始した。    画面いっぱいに少し目の垂れた、穏やかな表情の女の子が映し出される。   「悪い、連絡が遅れた」   『いいよいいよ。ナオくんはどこか抜けてるからね~。  あ、見つかったみたいだね。その子が、えーと、原見さん?』    シノはスマートパッドのカメラ越しに、ナオトの隣のモモを見つけたようでモモの方へスマートパッドを向けてやると、手を振った。   「ああ、そうだ。  モモ、コイツは俺の知り合いで大家代行のシノ」   「おおお、お初にお目にかかります!  原見モモです!!」    モモは画面に映るシノを見るや、カチコチに初対面の挨拶をする。    緊張し過ぎて敬礼しそうな勢いですらある。    学芸会の子供を見るような、微笑ましい眼差しでシノはモモに挨拶する。   『はじめまして、原見さん!  ちょっとナオくん、この子スーパー可愛いけど、変なことしてないよね?』   「……し、しとらんわ!」   『なに? 今の間。  あっやしっいなぁ~っ』
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