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「しつけーな…15分もすれば家着くから、そのとき改めて、な」
『はいはい。
クルマに気をつけて、寄り道しないで、知らない人についていかないで帰ってくるんだよ』
「ガキ扱いすんなっつーの、お前はオカンか」
ナオトは悪態をついて通話を切るが、勢いが弱い。
モモは、ナオトとシノの漫才みたいなやり取りに入っていけない。
「シノさんって、綺麗で優しそうな人ですね」
そう言いながらも、胸の奥には靄がかかったような、複雑な気持ちがわだかまり口を尖らせた。
「まあ、良いヤツではあるが、お節介っていうか余計なことまでしてくれんのがなぁ…
あ、すまん。勝手に電話切っちまって」
「いえ! そうじゃ…ないんです」
ではなんなのか、身体を思い切り動かして何かにぶつけたいような、スッキリしないこの初めて抱く感情をなんというのか、モモにはわからなかった。
「シノさんと仲良いんですか?」
「俺は基本ぼっちだしなぁ…
小さい頃からの腐れ縁ってヤツだし、俺みたいな面倒くさいのまで構う物好きだから、仲良い部類に入っちまうかもな。
不本意ながら」
バツが悪そうに頬を掻くナオトを見て、モモはナオトはこんな言い方しててもシノが好きなように思えた。
胸の奥のもやもやとした重く纏わりつくものが、今度はちくちくと針の先で軽く突くような痛みに変わる。
「まあ、お前とは気が合うと思うぞ。
普段はのんびりしてるヤツだし、料理とかも好きだしな」
「と、ところでナオトさん!
どうして私のいる場所がわかったんですか?」
ナオトの口からシノのことが出るたび、胸の奥のものがさらに悪い姿に変わる気がして、モモは話を変えた。
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