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 妙な服装以上にナオトの思考を鈍らせたのは、少女の愛らしさだった。    肩ほどで切りそろえられた栗色のさらさらの髪、潤んだ大きな瞳。芸能人と言われても信じるくらい、整った顔立ちの美少女だった。    しかし、とりわけ年頃の男子であるナオトの目を引いたのは、小柄で細身の身体には不釣り合いなほど、豊かな乳房だった。    エプロンで腰を絞るぶん、余計にその大きさが強調されている。   「あ、あのぅ…えっと」   「うわっ! すんません!」    その視線に気づいたのだろう、少女が頬を赤らめて身を捩る。    やらしい顔をしていたであろう自分を想像して、自己嫌悪に陥りながら、ナオトの思考が現実に帰還する。   「…それで、どちら様で?」    コスプレ美少女などという、強烈なパーソナリティを持っていれば、否が応でもナオトの脳裏に焼き付いているだろう。    しかし、そんな人種はそれこそTVやネットで見かけるアイドルやコスプレイヤーを除けば、ナオトの記憶にはいなかった。   「申し遅れました!  私、特農から派遣されて参りました、原見モモです。  今日からこちらに住み込みでナオトさんの身の回りのお世話をさせていただくことになりました」   「ファッ!?」    特農と言えば、政府が農林水産省にあった、品種改良を行う部署を前身に、10年ほど前に国と民間の資本で設置された、特殊農業生物研究所のことだ。    畑どころかプランターのひとつも無く、土に縁遠い生活を送る根っからのインドア派のナオトの家に、その特農の職員が派遣されてくるのは、結びつかない事象だ。
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