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 ナオトの険しい顔を見て、モモは首を傾げる。   「あれ? ご存知ないですか?  ひと月前ほどに書類や通知がナオトさんに送られまして、親御さんからもお知らせいただくことになっていたんですが…」   「いや…初耳だな」    言われてドアの郵便受けを開けてみると、たしかに2月27日の消印が押された特農のロゴが角に書かれた青い封筒が入っていた。    ならばと、ポケットからスマートパッドを取り出しメール受信箱を見ると、同じ日付で送られた見慣れないアドレスからのメールが届いていた。   「本当だ……すんません」   「あ! いえ、こちらの配慮が足りていませんでした」    メールやアプリケーションでの連絡が多いナオトには、郵便受けを確認する習慣が無く、知らないアドレスからのメールは不審がって開くこともなかったから無理もない。    そうなると、この子に落ち度は無いのだろうが、連絡をするはずだった両親が悪いと、ナオトは結論付ける。    朝のことも思い出し、胸の奥からふつふつと沸き上がる感情があったが、初対面の他人の前とあってナオトはなんとか自制する。   「ごめん、変な人かと疑っちゃったよ。  こんなとこじゃなんだし、散らかってるけど上がって」   「ありがとうございます! では…よっと」    パッと明るくなったモモの顔を見て安心したナオトは、すぐに目を丸くした。    ドアの死角から、モモが巨大なリュックを持ち上げていたからだ。    巻いた布団などがくくりつけられていて、おそらく衣料など彼女の荷物が入っているのだろうが、外国人の旅行者が背負ってるようなそれより長く、幅もあった。   「ふつつか者ですがよろしくお願いいたします」    新妻のようなことを言いながら、モモはナオトの部屋へ入っていった。
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