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「そう。御堂零は過去に大量の殺人を犯している。罪の無い人達を、一瞬にして葬ってるんだ」
「……え?」
時雨は姫希に顔を接近させ、絶対に彼女の記憶から忘れられないように、深く言葉を刻みつける。
「君も、俺も、被害者だ。十年前、常磐に住んでいた人達は、こいつに殺された。あの大火災は天災なんかじゃない。
人為的に引き起こされたものだったんだよ――こいつの魔力でなぁ!」
「――ッ!?」
姫希の目が大きく見開き、零を捉える。
零は彼女の視線に絶えきれず目を背けた。
「やっぱり知らなかったか……。御堂、とんだ偽善者だな、テメエはッ!!」
「違う! 僕はっ!」
「何が『違う』だ! クズ野郎がっ! 現にコイツは何も知らないでテメエと一緒にいるじゃねえかっ!?」
グッと喉に言葉がつまる。時雨が言っているのは事実だ。
「幸せそうな面して女と遊んでへらへらしやがって。過去に犯した罪は忘れて、矮小な善を施して自己満足か? ふざけるなよっ!」
時雨の手が紅蓮に染まる。
魔法の発動現象を起動させた手が、姫希に迫る。
「言ったよなぁ、俺はお前の全てを奪うって。その意味、分かってるか?」
まさか…………! 彼女を……!?
時雨の手が姫希の顔に触れる。
刹那――
時雨が吹き飛んだ。
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