第二章四話

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「必死だねぇ、御堂」    余裕のある笑みさえ浮かべる時雨だったが、その表情が凍る。  零の姿が消え、次の瞬間には時雨の眼前に出現していた。  瞬動術――魔力を足にため、爆発的な加速力を得る移動法を彼はおそらく知らない。 「チッ!」    咄嗟に繰り出された時雨の拳だったが、零の頬を掠めただけ。  無防備になった時雨の胸部に、零は強烈な肘鉄の一撃を喰らわす。  数メートル宙を飛び、時雨は地面に背中を打ちつける。  追い打ちをかけるため、零は跳び時雨の身体の上にマウントをとった。  これでお終いだ……!!  零の右手が魔力でうなり、渾身の一撃を放った。  粉塵が巻き上がる――否、それは水蒸気だった。 「――ッ!!」    右手が熱を知覚する。  時雨の火力が、零の水力を凌駕していく。 「フッ、ククッ……。水が火に弱いと、誰が決めた?」 「――ぅ――っ」  時雨は零の拳を顔面寸前で受け止めている。  徐々にだが、零の手は火傷を負い始めていた 「火は水に弱く、火は水に強い。確かにこの世の摂理そのものだ。だけどな――」    時雨の瞳が妖しく光った瞬間――  零は業火に包まれた。 「ああぁぁぅ――!?」    信じられない……。火が水を凌駕するなんて……。
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