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「必死だねぇ、御堂」
余裕のある笑みさえ浮かべる時雨だったが、その表情が凍る。
零の姿が消え、次の瞬間には時雨の眼前に出現していた。
瞬動術――魔力を足にため、爆発的な加速力を得る移動法を彼はおそらく知らない。
「チッ!」
咄嗟に繰り出された時雨の拳だったが、零の頬を掠めただけ。
無防備になった時雨の胸部に、零は強烈な肘鉄の一撃を喰らわす。
数メートル宙を飛び、時雨は地面に背中を打ちつける。
追い打ちをかけるため、零は跳び時雨の身体の上にマウントをとった。
これでお終いだ……!!
零の右手が魔力でうなり、渾身の一撃を放った。
粉塵が巻き上がる――否、それは水蒸気だった。
「――ッ!!」
右手が熱を知覚する。
時雨の火力が、零の水力を凌駕していく。
「フッ、ククッ……。水が火に弱いと、誰が決めた?」
「――ぅ――っ」
時雨は零の拳を顔面寸前で受け止めている。
徐々にだが、零の手は火傷を負い始めていた
「火は水に弱く、火は水に強い。確かにこの世の摂理そのものだ。だけどな――」
時雨の瞳が妖しく光った瞬間――
零は業火に包まれた。
「ああぁぁぅ――!?」
信じられない……。火が水を凌駕するなんて……。
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