第二章四話

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「火は水を蒸発させる。そのへん、お前は忘れてるんだ」    火だるまになった零は、地面を転がる。  火を払い落とすように、無様に転げ回った。 「さて、と……」    燻っている零に、時雨は接近する。  頭部を掴み、引きずりあげた。 「御堂、そろそろここで死んでくれ。大火災の生き残りに殺されるなら、お前も本望だろ?」 「ぁ――ぅ……」    じゃあな御堂、あの人にはよろしく伝えといてやるよ、と言い時雨は零に手を伸ばす。  煉獄の炎が押し寄せる。――あの日のように。  彼に殺されるならば、それも運命なのだろう。  あの日に自分は死んだも同義なんだ。  何の因果か、かろうじて存命しているだけ。残っていた命が無くなるに過ぎない……。  零は自分の死を受け入れようとした。  だが―― 「だめぇッ!!」  と、それまで怯え震えていた姫希の声が響く。 「御堂くん、を、殺さないで……!」    姫希が時雨に体当たりしたが、時雨はたじろぐ事さえしなかった。 「チッ……。鬱陶しいんだよ、レプリカ風情が!!」 「あうっ!」    うるさい虫を払うような軽い一撃が姫希に当り、彼女は転んだ。  だが、魔力を編んでいる拳は通常の男子の力の比じゃない。  姫希は道路に転倒し、気絶しだようだ。  プツン、と何かが切れる音を、零は聞いた。
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