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「火は水を蒸発させる。そのへん、お前は忘れてるんだ」
火だるまになった零は、地面を転がる。
火を払い落とすように、無様に転げ回った。
「さて、と……」
燻っている零に、時雨は接近する。
頭部を掴み、引きずりあげた。
「御堂、そろそろここで死んでくれ。大火災の生き残りに殺されるなら、お前も本望だろ?」
「ぁ――ぅ……」
じゃあな御堂、あの人にはよろしく伝えといてやるよ、と言い時雨は零に手を伸ばす。
煉獄の炎が押し寄せる。――あの日のように。
彼に殺されるならば、それも運命なのだろう。
あの日に自分は死んだも同義なんだ。
何の因果か、かろうじて存命しているだけ。残っていた命が無くなるに過ぎない……。
零は自分の死を受け入れようとした。
だが――
「だめぇッ!!」
と、それまで怯え震えていた姫希の声が響く。
「御堂くん、を、殺さないで……!」
姫希が時雨に体当たりしたが、時雨はたじろぐ事さえしなかった。
「チッ……。鬱陶しいんだよ、レプリカ風情が!!」
「あうっ!」
うるさい虫を払うような軽い一撃が姫希に当り、彼女は転んだ。
だが、魔力を編んでいる拳は通常の男子の力の比じゃない。
姫希は道路に転倒し、気絶しだようだ。
プツン、と何かが切れる音を、零は聞いた。
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