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「それよりお前」
時雨が姫希に質問する。
彼女は零の背中のシャツをぎゅうっと握りしめる。
心底、怯えているようだ。
「こいつが何をしたか知ってるのか?」
「え……?」
「過去にこいつに何をやったか知ってるのか、と訊いてるんだ」
ぶるぶると彼女は首を横に振る。
「やめろ! 彼女は関係ないだろ!!」
「はぁ? 大いに関係あるだろ。大火災の生き残りが……被害者が加害者と一緒にいるんだ。その子が何も知らないで一緒にいるだけなら、可哀想じゃないか」
瞬間、零は跳ねた。
時雨に飛びかかり、拳を彼に叩き込む。
時雨は道路に転び、周囲の人達が驚き二人を見た。
「……クッ、ハハッ。図星か、御堂」
「うるさいっ!」
怒りにまかせ更に拳を繰り出そうとしたが、その前に時雨の蹴りが零の腹にめり込んだ。
肺にあった空気を吐き出し、もんどり返る。
ペッと地面に血の混じった唾を時雨は吐いた。
「喧嘩で俺に立ち向かうなんざ、十年早いんだよ、屑」
服についた埃を払い、時雨は立ち上がる。
そして怯えている姫希に問いかける。
「なぁ、十羽乃さん。知ってるかい」
悠然と、一歩一歩彼女に近付いてく。
「こいつはね、殺人鬼なんだよ」
「さつ……じん……?」
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