第二章三話

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「それよりお前」    時雨が姫希に質問する。  彼女は零の背中のシャツをぎゅうっと握りしめる。  心底、怯えているようだ。 「こいつが何をしたか知ってるのか?」 「え……?」 「過去にこいつに何をやったか知ってるのか、と訊いてるんだ」    ぶるぶると彼女は首を横に振る。 「やめろ! 彼女は関係ないだろ!!」 「はぁ? 大いに関係あるだろ。大火災の生き残りが……被害者が加害者と一緒にいるんだ。その子が何も知らないで一緒にいるだけなら、可哀想じゃないか」    瞬間、零は跳ねた。  時雨に飛びかかり、拳を彼に叩き込む。  時雨は道路に転び、周囲の人達が驚き二人を見た。 「……クッ、ハハッ。図星か、御堂」 「うるさいっ!」    怒りにまかせ更に拳を繰り出そうとしたが、その前に時雨の蹴りが零の腹にめり込んだ。  肺にあった空気を吐き出し、もんどり返る。  ペッと地面に血の混じった唾を時雨は吐いた。 「喧嘩で俺に立ち向かうなんざ、十年早いんだよ、屑」    服についた埃を払い、時雨は立ち上がる。  そして怯えている姫希に問いかける。 「なぁ、十羽乃さん。知ってるかい」    悠然と、一歩一歩彼女に近付いてく。 「こいつはね、殺人鬼なんだよ」 「さつ……じん……?」
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