第二章四話

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第二章四話

「彼女に、触れるなっ!」  道路に激突し、呆けた顔を時雨は浮かべる。  一瞬時雨も何が起こったのか理解出来ないでいるようだった。  唇の端が切れ、一筋の血が流れている。  時雨は血を拭い……嗤った。 「いいねぇ、御堂。やればできるじゃねえか」    時雨の両手が真っ赤に燃え上がる。  零の拳にも水流が巻き起こった。 「クハハッ。〝火〟には〝水〟か。セオリー通りだ、なッ!」    時雨が駆け出すと同時に、零も駆けた。  繰り出される紅蓮の拳を零は受け止める。  水の属性で火の属性を中和しているからこそ出来る芸当だ。  続いてもう一方の拳が眼前に迫ってきた。  辛くも受け止め、両者は睨み合った。 「やるじゃねえかっ」    多少の感嘆を含む讃辞を送る時雨に対して、零は素直に喜べない。  避ければ、背後にいる姫希が怪我をする。  こいつは姫希を傷つけるのに躊躇しないだろう。  内実を悟られないよう平然を保っていたが、突如、視界が揺らいだ。  頭突きを喰らった、と理解したのは痛みが額に押し寄せてからだった。  目の前が混濁する。  意識が飛びそうになるのを必死に堪え、零は蹴りを放つ。  時雨の腹部に直撃した反動を利用して、零は背転し距離をとる。
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