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第二章二話
夕刻、駅前の繁華街に向かうと十羽乃姫希と遭遇した。
どうやら商店街で買い物をしているようだ。
「十羽乃さん、こんばんわ。買い物?」
「あ……、御堂、君」
零でいいのに、と思ったが特に何も言わないかった。
「今晩のおかずでも買いに来たの?」
「うん……」
見ると彼女は結構な荷物を抱えている。
「寮には食堂があるから、そっちで食べればいいのに」
「うん……。でも、昨日、御堂君の家で食べたご飯、美味しかったから……。私も、作ってみよう、と思って」
「そっか……」
昨晩の夕飯、零はバナナしか食していない。
一華の機嫌は一晩明けた後でも継続しているようで、今日の朝食も粗末なものだった。
「まだ買う物あるの?」
「うん……。あと、日用品が、少し――あ……?」
零は姫希の荷物を持つ。
「じゃあ買い物手伝うよ」
「でも……」
「いいんだ。これも仕事のうちだから」
姫希は少しだけ逡巡したようだが、零の好意に素直に甘えたようで、「うん……」と頷いた。
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