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第二章三話
斜交時雨の姿を捉えた瞬間、零は姫希の前に出て警戒態勢をとる。
姫希は彼が何故このような態度をとるのか不安がっているようだった。
「斜交……先輩」
「よお、御堂。昨夜ぶりだな」
二人の間に険悪な空気が漂う。が、それも一瞬だった。
時雨は零の背後で怯えている姫希をめざとく見つけ、下卑た目付きで彼女を見る。
「へぇ、その子お前の彼女か? かわいいねぇ……」
「何か……用ですか?」
ニヤニヤと人を嘲るような笑みを顔に貼り付ける時雨に対し、零は警戒を続ける。
「別に、今日はお前に用はない。まだな。それより――」
時雨の視線が姫希に移る。背後で、ビクッと震える反応がする。
「今日はそっちの子に用があるんだよ。なぁ、十羽乃姫希さん」
「……先輩、どこで彼女の名前を」
時雨が姫希の名を発した瞬間、零はいつでも魔法を発動出来るように、待機状態を保持する。
自分に危害を加えるならまだしも、彼女に何かをするならば黙っていられない。
時雨は零の威嚇を分かっているのに、余裕のある態度を崩さない。
「どこだっていいだろ、そんな事。瑣末な問題だ」
「暁の風か?」
零の質問に時雨は答えない。ただ口の右端をあげるだけだった。
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