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役員会が終わって帰宅途中に、晶子と朋美はさちえを誘って竹虎に行った。一樹は早乙女校長に役員会の結果を報告に行くと言って別れた。校舎の裏門を抜けてしばらく行くと商店が並ぶ一角に、竹虎があった。晶子たちにとって暫くぶりの竹虎だった。丁度、午後四時を回った頃で、子供たちが駄菓子やけん玉などの遊び道具目当てに数人たむろしていたが、大学いもの臭いが漂う店内は相変わらずだった。
「おや、久しぶりだね、晶子に朋美」
奥の調理場から竹虎が顔を出した。
「今日は友だちのさちえを連れてきました。わたしたち、学校の生徒会役員を任されることになったんです」
「ほう、それは豪気だね、晶子。さあさあ、奥の席に座ってチョイと待っておくれでないか。じきに大学いもが出来上がるからね」
そう言うと、竹虎はまた調理場に引っ込んだ。奥のテーブル席に晶子と朋美は並んで座った。奥に座る朋美の前に、さちえが座った。
「ところで、校内ダンス大会のことだけど。さちえはどんなことを調べてるの?」
晶子が訊いた。さちえは湯飲み茶わんをテーブルに並べていた。ポットを手にした朋美がそれらに順にお茶を注いだ。
「わたし、アメリカのハイスクールでやっているプロムを調べてるんです」
「プロムって、あの卒業式のダンスパーティーのこと?」
「そう。わたしたちの学校でも、やってみたいと思って一樹さんに相談したら賛成してくれて。それで、生徒会長に立候補しようということになったんです」
「そうだったの。それじゃあ、わたしじゃなくてさちえが主担当になるべきじゃないのかしら?」
「わたしは晶子さんみたいに強くないし、実行力もないでしょう」
大人しくて控えめな、さちえらしい物言いだった。
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