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「誰かと待ち合わせみたいですね」
さちえが指摘した。
「デートかしらね。そう言えば、昨日竹虎で会ったとき、晶子にいまアプローチしてる女子がいるって、白状してたわ」
朋美が晶子の顔を見て嬉しそうに言った。
「こんな所からじろじろ見てたら、椿くんに悪いわ。早く出ましょ」
そう言って、晶子が席を立とうとした時だった。
「あっつ。来たわ。椿くんのお目当ての子よ。きっと」
朋美がはしゃぐような声で言った。晶子はその女子を見た。
(あっつ。あれは・・・)
晶子は、思わず自分の内心の驚きを言葉にしそうになって口を手で抑えた。
「なに、晶子。あの子知ってるの?」
「えーっつ。全然。知ってるわけないじゃない」
晶子は朋美の鋭い指摘に内心焦りながらも、平静を装った。しかし、晶子は彼女を見知っていた。いや、正確に言えば、ファントムを使って晶子が変身した女生徒の顔がその女子の顔だったのだ。
(あれは、放送部員で二年A組の白河あやねだわ。わたしが蜷川庄司にインタビューするためにファントムを使って彼女に変身した時、鏡に映ってたわたしの顔と同じだもの)
あやねは近寄り難い美貌の持ち主で、放送部員の間ではマドンナ的存在だった。晶子は蜷川庄司が生徒会長選挙で犯した不正をあばくためにあやねに成りすましたことがあったのだ。
晶子たちが中二階から見守る中、階下では、ドアから入ってきたあやねに気付いた俊介が席を立った。そして、出入口の所にあやねを待たせたまま、俊介は急いでレジで会計を済ませた。それから、二人は喫茶店を一緒に出て行った。
「うーん。椿くんは良いわね。あんなに美人のお相手をしっかりゲットして」
席に落ち着いた朋美が言った。
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