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そうであっては欲しくない反面、そうだったらと思う気持ちが勝り、変な汗が流れる。
仁君の次の言葉が怖い。
「兄貴だ……」
「え? お兄さん……?」
中性的な顔に、僕はてっきり女性かと思った。
それくらい、綺麗な顔をしていた。
それに、仁君とは全く似ていなくて、兄弟に見えない。
「そう。俺の兄貴」
「そ、そっかー。お兄さんか、僕てっきり恋人かと思った……」
「え……?」
でも、その反応を見て、僕は知ってしまう。
「恋人か…ふっ……そう見えるか……」
〝恋人〟に見えた。
それが仁君にとって、とても嬉しい言葉だったのだと。
「お前、いい奴だな」
「え……? そ、そうかな……」
仁君は嬉しそうに僕にそう言った。
その笑みを僕はずっと見たかったのに、心が切なくなる。
仁君は、実の兄に恋をしている。
その事を知ってしまったから。
「あ、もう時間か。行くか」
「う、うん……」
いつの間にか、ここを出る予定の時間になっていた。
僕は仁君の後に続き、部屋を出て、その指定された場所へと向かう。
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