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2.彼を追い掛けて
彼、天宮仁(アマミヤ ジン)の名前を知るのは数時間後の事だった。
どうして知れたか。
それは、勇が仁君の名前を知っていたからだった。
「敵の10番? あぁ、天宮仁ね」
試合に負け、目を腫らした勇は右手に氷嚢を持ち、僕にそう言った。
「へ、へー…仁君って言うんだ……」
僕は仁君の名前を知れて嬉しくなり、今にもメモを取りたい衝動に駆られる。
でも勇の前でそんな事できるはずもなく、それを堪えるのに必死に平常心を保った。
「なんでそんな事聞くんだよ」
「え? べ、別に……上手いなって思っただけ」
そんな僕の突然の質問に不信感を抱いたらしい勇は、僕の顔をじっと見てそう聞いてくる。
僕はその勇の鋭い視線に目を泳がせた。
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