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3.まさかの……
入学式も押し迫ったこの日、僕はダンボールを抱えながら、とある廊下を歩いていた。
そこは、青林学園高校の敷地内にあるA寮だ。
「緑は503号室だっけ?」
「うん。勇は?」
「俺? 俺は505号室」
「あっ、近い」
勇と二人、慣れない場所に苦戦しながら、さっき入口で手渡された紙を頼りに進む。
(……見られてる)
すれ違う、多分同学年だろう生徒達が僕達をチラチラッと見ては何かを話す。
それは、僕が場違いに見えたからだろう。
自分で言うのも何だが、こういった視線には慣れている。
「さっきからヒソヒソ話しやがって。あれ全部お前の話しだぞ」
勇はそんな周りの態度に苛立ちを見せ、僕にそう言う。
「分かってるよ。慣れてるもん」
「慣れるなよ、そんなもん」
「だって僕、可愛いから」
ニコッと笑みを向けると、バシッと足を蹴られた。
この笑みが効かないのは勇だけだ。
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