増殖ボール

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       《1》 生徒会室の窓口には、白い木箱が置いてある。 手紙を入れる為の穴が空いており、中を簡単に見れないように、きちんと鍵までついていた。 表面に、"お悩み相談BOX" と、大きく書かれたその箱を上下に揺すると、白鳥茜(シラトリアカネ)は肩を落とした。 本日のお悩み件数...ゼロ。 この箱を設置してから六日間、未だに相談の手紙が入れられることはなかった。 勿論、悩みがないのは良いことだ。 しかし、これだけ手紙が寄せられないのは、生徒たちに悩みがないのではなく、自分たち生徒会の宣伝力と、信頼度が足りないからなのだろう。 どうしよう... これじゃ、またあの人に嫌味を言われちゃうよ。 空のお悩み相談BOXをそっと元の位置に戻すと、私は背を丸くしながら生徒会室の扉を開いた。 .
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