増殖ボール

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「あれっ、茜...今日は超早いじゃん」 私が顔を覗かせた途端に、副生徒会長の森恵(モリメグミ)が左手を挙げた。 右手にはマスカラが握られ、鏡に向かって物凄い集中力を見せている。 相変わらず、今時珍しい真っ白なアイシャドウを決め込んだ、コテコテのヤマンバギャルスタイルは健在のようだ。 どうやらまだ彼女しか来ていないらしい。生徒会長の椅子が空であることに、安堵の息を洩らした。 「例の箱が気になって早めに来ちゃいました...って、恵さんこそ早くありません?」 「アタシは超早いよ。一時間前からここにいるしぃ」 「一時間前?」 一時間前は、まだ授業中のはずですけど。 「それより、どうだったのぅ? 誰か入れてくれたぁ?」 なに食わぬ顔で、マスカラを塗り重ねていく恵に、私は「残念ながら」と、首を振った。 .
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