呪詛と憎悪

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「では、いくよ」 鉄格子に囲まれた部屋に私は連れて行かれ、そこで手術を行うと告げられた。 手術といっても簡単なもので、注射を数日にわたって何度も体に打つだけ。 各務原さんは注射器を取り出し、私の腕に打ち込んだ。 「はい……っあぁぁあぁぁぁあぁぁ!!」 呪詛とは、魔女の血から抽出した成分を基にして作った対魔法の抗体を体内に取り入れることで、魔導の力を無効化させること。 その抗体は数日に分けて少しずつ自らの血液に取り込み馴染ませ、体の仕組みを一から変えていく。 その際、全身を引き裂かれるような激痛が止めどなく襲う。 そのあまりの激痛のため最悪の場合は死に至ることさえある。 本来、体が未発達な子供の体に打ち込む物ではない。 けれど、当時の私には、そんなことはどうでもよかった。 どんな痛みも、魔女を殺すためなら耐え切れると思っていた。 その痛みに耐えきることができれば、自らの血液全てが抗体となり、具現化した武器で魔法を打ち壊すことができる。 「はぁっ……はぁっ……くうっ…………」 数日後、呪詛が体に馴染んで痛みがようやく薄れていく。 頭がうまく働かず、意識もぼんやりする。 けれど、体の中の仕組みが全て変わったと分かる。 各務原さんが、私の頭を優しく撫でてくれる。 「澪ちゃん、お疲れ様。よく耐えきったね」 「ありがと……ございます……」
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