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私がなぜこうもモジモジしてしまうのか、それは彼が私の理想の男性の特徴にピッタリと一致していたからである。私も学生時代には何人か好意を持った男性がいたが、彼らには申し訳ないが理想には何かが足りず、ある程度は親しかったが、それ以上の関係にはならなかった。私が恋愛下手で奥手だからかもしれないのもあるが。
けれど、彼は見た目だけであるが、理想の男性に完全に一致しているとエレベーターホールで出逢ったときに直感で感じた。だから、それにビックリして足を一瞬止めてしまったのだ。
彼と出逢う前の私はある意味、今後恋愛も結婚もできないのではないかと半ば自暴自棄になっていた。学生時代の同級生たちの何人かは早くも結婚式をあげて既に結婚している。私には縁は無いだろうな、と自信さえも失いつつあった。そんな時、彼と出逢い、私に少しばかりの希望が見えてきたのだった。
内定式は滞りなく終わり、その後、会社近くの高級レストランで内定者全員と社長を含めた幹部たちとの昼食懇談会が開かれた。その懇談会で内定者たちが順番に簡単な自己紹介をしていった。もちろん、私も自己紹介をした。
私は、木村明香里(きむらあかり)。この春、都内の女子大を卒業する22歳の女性で、都内近郊の実家から通っている。背は平均的よりも少し低め。髪は肩までの届くロング黒髪だが、今日はポニーテール型に纏めている。メガネは掛けていないがコンタクトだ。
そして彼は、名前が工藤瑛佑(くどうえいすけ)と言うそうで、都内の大学をこの春卒業する22歳の男性。都心から車で3~4時間ほど掛かる地方の小さな港町の更に郊外の出身で、実家から通うのはさすがに大変な距離と時間なので、大学入学の時から単身上京、アパートで一人暮らししているそうだ。ちなみに、誕生日は私の方が半年ほど先で、彼が内定者達の中では一番年下である事が後に分かった。
そんな彼であるが、見た目からマジメそうで冗談など通じなさそうと思っていたが、その予想は良い意味で裏切られた。マジメはマジメだが、自らコミカルな口調で笑いを取り、とても話し上手で親しみやすい。すぐに幹部たちや社長、他の内定者たちに気に入られたようだ。その横で、私の彼に対する密かな好感度も上がった。
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