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「世尾くん、今から私とデートして下さい」
今まで小音のBGMだった生徒たちの喋り声が、大きい音となって聞こえた気がした。
下駄箱から靴を出そうと上げた手がだらんと落ちる。
「…………え、えっ?」
ぼく、世尾優成(セオユウセイ)は突然のことに頭が追いつかず、そんな意味のない声をあげてしまった。
でも、無理もないと思う。
だってぼくの目の前には、恥ずかしそうに赤くなった顔を右下に傾けた、可愛らしい女の子が立っているのだから。
いや、女の子と呼ぶのはちょっと幼い呼び方かもしれない。何しろもう高校生なのだ。
彼女は白っぽい、というか少し青白い肌に、大きな目にかかった長い睫毛(マツゲ)。
ちょっぴり青みのかかった艶(ツヤ)のある黒髪は、左耳の上でシュシュに飾られ結ばれている。
女子が触角と称している二つの細い髪の束が、顔の横でたびたび冷たい風に流れるように揺れた。
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