第1章

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どうしよう、逃げようかな、でもどこへ? ああいう、恐い団体の人って、逃げても逃げても追いかけてくるものだよね……。 あたしの思考は高速でまわっていたが、なんの解決策も浮かばず、悪いことばかりが頭の中をぐるぐると駆け巡った。 きっと借金のカタに愛人にされるに違いない。そして、怪しい世界で一生を過ごすことになるんだ。父さんってば、なんてことをしてくれたんだろう。 ……でも。 あたしは父さんとの日々に思いをはせた。 さんざん世話になって幸せな16年を過ごさせてもらった。それなのに、なんの恩返しもできなかった。 これで、あたしを育ててくれた恩を天国の父さんに返せるのなら、その遺言どおりに、愛人にでもなんにでもなってあげよう……。姐さんと呼ばれる人生も、もしかしたら、楽しいかもしれない……。 半ばやけになったあたしは、そう決心するしかなかった。
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