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――僕が彼女のことを知ったのは、高校二年生になって最初の席替えの日。
「椎名、何番だった?」
クラスでの僕の唯一の友人、矢島は「19」と書かれた紙をひらひらさせながら僕の紙を覗き込もうとした。
「爆発すればいいのに」
「え、何だって?」
聞こえているはずだけれど、矢島は仏頂面を浮かべる僕に耳を向けて聞き直す。
「学園生活で地味に盛り上がるイベント、席替え。リアルにそんなもので盛り上がれるリア充思考な高校生なんて、教室ごと爆発してしまえばいいのに」
「教室ごと爆発したらお前もドカンだけどいいのか?」
「僕はもう早退するから。その後で爆発してよ」
矢島は苦笑しながら、机に突っ伏している僕の紙を奪い取った。
「何だよ、そんなに嫌な席になったのか?ていうか、教室を爆発したいと思うほどの席ってどんな……」
僕の席番号が書かれた紙を見て、苦笑していた矢島は吹き出した。
「おまっ、これっ!」
書かれていた数字は「25」。位置は教室最後尾最左列。確かに、目が悪い人以外は誰もが望む最高の席。僕もこの所謂“主人公席”を引き当てたことは嬉しい。けれど、ただそれだけのことでは、僕のこのやる気のなさを改善することはできないのだ。
席替えとかマジどうでもいい。早く帰ってパソコンの前に着席したい。
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