冬、夏。

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   01 秋月沙織  幼い頃からオレは変わっていて、いや、幼い頃はごくごく一般的な馬鹿なやつだったのかもしれないが。  いつの頃からだろう、そう、中学に入ってからぐらいだろうか、自我、というのが月並みにも生まれ始めた時、なんだか自分が結構アウトローかもしれないなんて、なんとなく意識し始める。いや、そういうのを中二病なんて偏見的な言い方をされるのかもしれないが。  オレの顔は平均より少し良くて、なんだかよくわからないが微妙に女子からも人気があって、告白とかもされて、学校での立ち居地なんか意識してみたりして、けど、だんだんとわかってくるのは、他人が見ている世界と、自分の見ている世界が違うってことで。  人間はひとりひとりが違う、だから、ここで言う違うってことは、あくまで観測する自分という世界を中心と定義した場合。みんながみんな、いろんな世界、世界という宇宙を持っていて、オレのそれもその一つにすぎないが、ならば、もっとオレの世界に近いものがあっても良いんじゃないかって思うのは、それも、違う、なのだろうか。  悲観的に見れば、自分の世界に浸ってしまう、頭おかしいやつってことになるんだろうが。 大体、みんながみんな世界を持っているのであれば、だったら、どうして、おかしい、なんて定義がでてくるのだろうか、と思う。オレたちは、社会って世界に住んでて、だからあるいは、みんなその社会って世界と、自分の世界を照らし合わせることで、整合性を保とうとして、それが、いわゆる『みんな』って定義なのだとしたら、オレの世界は、そんな整合性の取れていない、整合性なんてとりたくない、社会の不適合世界、不適合者という部類に分類されてしまうのだろうか。それでもきっと生産性のあるやつは許される。多分、整合性ってそういうものだって、高校を出た時に思った。
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