冬、夏。

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   02 蓮見綾香 「あ、どうも、こんにちわ……」  蓮見綾香(はすみ あやか)と出会ったのは秋月が死んでしまった次の年の春だった。  秋月の部屋に入居してきた大学の後輩で、その時ばかりは、オレは、夢でも見ているのだろうと、ふらついた。  蓮見綾香は、秋月沙織と瓜二つの容姿をしていた。彼女の入居日の当日、やけに騒がしいと隣にムカついていたオレは、気分を変えるのにガチャりとマンションの扉を開けて、コンビニに向かおうとしたのだが、同時に、隣の部屋の扉も開いて、騒がしい見知らない女子と、彼女が、外に出てきたのだ。オレの部屋はマンションの奥にあって、その左隣が秋月の部屋だったから、オレはその部屋を通らないとマンションの外へ出られない。嫌でも目が、いや、目を逸らすことができなかった。蓮見綾香は秋月沙織と見も毛もよだつほど似ていたのだ。視線が瞬間的に蓮見綾香と重なった。アウトローなオレはがっつりと見知らぬ女子の顔を見てしまったことを、しまった、と思ったが、通りがかったオレを見た彼女たちは、一瞬そのおしゃべりを静止して、無言の会釈を返してきた。目があってしまった蓮見綾香は少し目を見開いて、すぐに視線を地面へと落とした。オレは完全に漫画の主人公だ。そんなロマンチックなものでもないのかもしれないが、本当に言葉をなくしてしまうほどの衝撃が、そこにあったのだ。  秋月の妹のような人間がいて、サプライズとかならまだ妄想の範疇だが、こんなにも他人が似ていることなんてあるだろうか。それが体裁として隣に引っ越してくるだろうか。  漫画やドラマのような出来事は、本当にあるのだ。
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