甘くて苦しい香り

11/25
前へ
/27ページ
次へ
明るくて優しく大らかな涼太だけど、ひとたび焦りを感じると、今までとは違った顔を見せる。 初めて結ばれた時もそうだった。 別々の高校に進学したことで、少しずつすれ違っていった私たち。 『もしかしたら、こうして自然消滅してしまうかもしれない』 なんとなくそんなことを思い始めた頃、同じ学校の先輩に冗談めかしく『付き合わない?』と言われた。 勿論、『彼氏がいますから~』と笑って流して、一応涼太にも報告した。 それが涼太の心に火をつけたらしい。 『梓ちゃんがこのまま離れて行きそうで不安なんだ』 切ないような声でそう言って、強く抱き締めた。 私はそんな彼の不安を汲み取り、ハジメテを捧げたんだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1460人が本棚に入れています
本棚に追加