甘くて苦しい香り

21/25
前へ
/27ページ
次へ
その時、下の階から、 「涼太ぁ! お友達にお茶とケーキの用意が出来たから、みなさんで降りてらっしゃい」 と涼太のお母さんの声が響いた。 その声に部屋でダラダラとしていた友人達は弾けたように立ち上がり、 「やりぃ、涼太の母ちゃんのケーキは最高だよな」 「待ってました!」 と勢いよく部屋を出て、ドタバタと階段を降りて行った。 「梓の分もあるから、行こう」 笑みを浮かべる涼太に、咄嗟に「ううん」と首を振った。 「本当にCD返しに立ち寄っただけで、早く帰らなきゃ。家の用事もあるの」 本当はもっとゆっくりすることもできたけれど、なんとなく、もう落ち着かなくて、 この場にいられない気持ちだった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1455人が本棚に入れています
本棚に追加