きっとそれは初恋で

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やがて体の上に散らされた万札。 ああ、そうか。 母親に捨てられた自分は、こうして生きていくしかないんだ。 虚ろな目で、そう思った。 その時、自分はブロックしたんだ。 心を武装して、淡々と、傷付きすぎないように。 でもそれは脆い硝子の鎧。 幸せな家庭の中で微笑む佐竹の姿に、一瞬にして砕け散った。 やがて席を立ち、店内へと姿を消した佐竹一家の遠ざかる背中を呆然と見ながら、 「うわああああああああああ」 気が付くと声を上げて、その場に蹲り涙を流していた。 通り過ぎる人たちがチラリと見ては、目をそらしていく。
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