第1章

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すべての歯車がかみ合っていないと物は正常に動かない 運命の歯車というのもきっと同じである そこに壊れた歯車があったとしたらどうだろうか おそらくその歯車は周りに影響を与えるだろう そしてやがては… 「…大……か…」 「大…夫…すか!」 「大丈夫ですか!!」 大きな声が聞こえる 「なん、だ…?」 「あ、起きましたか?」 「お怪我とかをしてる訳ではなさそうですね」 頭が働かない いや、そうじゃない 何もわからない そして気づいてしまった 記憶がない 記憶がないといっても言葉みたいな知識はある しかし、思い出のようなものが一つもない 「あの、さっきから一人でぶつぶつ何か言ってますけど大丈夫ですか?」 「あっ、すいません、取り敢えずここはどこですか?」 「やっぱりあなた【外】から来た人間ですね」 「【外】?どういうことですか?」 「ここは忘れ去られたものが来る場所」 「欠落した記憶って呼ばれてますけどね」 「忘れ去られたものが来る場所?欠落した記憶?」 「意味が分からない」 何を言っているんだこの人は 「来たばかりの時はみんなそうです」 「…もしかして記憶がないんですか?」 「…………」 「…はい」 「なぜわかったんですか」 「よくいるんですよここに来た時記憶がないってのは」 「でも大体はここで生活しているうちに思い出します」 「そう、なんですか…」 おそらくここは自分の知識の中にある生きていた場所とは違う 「…どうすればいいんだろう」 「これも何かの縁です」 「少しの間でしたら私の住んでいる館の部屋を貸してあげましょう」 「ほ、ほんとですか!」 「ええ、もちろん」 これで少しの間はなんとかなりそうだ 「ところで名前は?」 「ここでは名前なんて意味を成しません」 「それにあなただって自分の名前が曖昧ですよね?」 「確かにそうですけど…」 「あ、そうそう聞き忘れてました」 「あなた、人間ですよね?」 「は?」 何を言っている 人間ですよね? まるで人間以外の何かがいるみたいに 「気を付けてくださいね」 「ここは忘れ去られたものが来る場所」 「それは」 『人間だけじゃありませんから』
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