第1章

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「全く、危なすぎです」  近くから誰かの声が聞こえた。  優しい女性の声。  恐る恐る目を開ける。  助かったんだ。  気が抜け、ヘナヘナと地面に座り込む。 「大丈夫ですか?」  癒されるような女性の声に亜季奈は安堵したのか、目から涙が溢れてきた。  女性により、亜季奈と琉一朗は車で家までお届けされた。 「結局返ってこなかった」  亜季奈はベッドの中で、自分のものではないスマートフォンを見つめる。  電池がなくなり電源が切れ、ただの箱となったスマートフォン。  充電できるのかな。  返す時にすぐ使える方がいいよね。  充電器を取り出し、端子をスマートフォンに差し込んだ。  電源ボタンを長押しし、電源をいれる。  充電しています、の文字をディスプレイで確認した。 「二日目だ」  琉一朗は机の上で、自分のものではないスマートフォンを見つめる。  電池がなくなり電源が切れ、ただの箱となったスマートフォン。  充電できるのか。  返す時にすぐ使える方がいいはず。  充電器を取り出し、端子をスマートフォンに差し込んだ。  電源ボタンを長押しし、電源をいれる。  充電しています、の文字をディスプレイで確認した。  お好み焼き屋。 「いらっしゃい」 「こんばんは」 「あっ、昨日来るかと思ってたわ」 「店をど忘れしてしまって」  琉一朗はカウンター前の椅子に座った。 「いらっしゃい」 「こんばんわ」 「あっ、来とるで。この人や」  奈津帆は入ってきた亜季奈にカウンターにいる琉一朗を紹介する。
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