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数年後の12月のある日。
この日も朝から白い雪がチラチラ降り始めている。
お好み焼き屋は今日も営業中だ。
「いらっしゃい、おっ!」
お好み焼きを作る奈津帆の手が止まる。
「こんばんは」
「こんばんは」
仲良く手をつないで入ってきたのは亜季奈と琉一朗だった。
「私達、今日婚姻届出してきたんです」
亜季奈が照れくさそうに言う。
「それでお世話になったこちらに寄ろうと」
琉一朗もデレデレ感満載だ。
「ふゆち、ありがとう」
「いい加減ふゆちはやめてや」
奈津帆の顔も久しぶりにふゆちと呼ばれた嬉しさで綻んでいる。
「今日は二人の新しい門出を祝してなんか作ったるわ」
「ごめんなさい、今日行かないといけないところがあるのでまたの機会でいいですか?」
奈津帆の申し出を断り、亜季奈と琉一朗は店の外に出た。
「もう付き合ってるんですか?」
懐かしい癒されるような女性の声に二人は振り返った。
「あの時の。勝手に車の前に飛び出したのに送って頂いてありがとうございました」
亜季奈が頭を下げる。
「ありがとうございました。今日婚姻届出してきました」
琉一朗も頭を下げる。
「お姉ちゃん、何しとん?」
見れば奈津帆が店から顔を出している。
「ふゆちのお姉ちゃん!?」
「ビックリです!」
同時に驚く亜季奈と琉一朗。
「冬川奈津帆の姉で冬川紗愛といいます」
冬川紗愛は礼儀正しく頭を下げた。
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