第1章

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「ふゆち、お酒!!」 「ふゆちって何や。それにな、お好み焼き屋来てお酒ばっかり飲みなや」 「だって・・・・・・飲みたいんだもん!!」  春田亜季奈は店員の冬川奈津帆に空のコップを突き出した。 「ふゆち! 早くちょうだい!!」 「せやからふゆちってなんなんやて」  奈津帆は焼きそばを焼きながら、亜季奈にふゆちという言葉の意味を聞き返す。 「店員さんの名前、冬川だから、ふゆち」  亜季奈が奈津帆の左胸につけられた名札を指さして言う。 「変すぎるやろ。初対面の人間に言うセリフか?」  奈津帆と亜季奈は今日が初対面。  なのに何故か亜季奈は奈津帆に対して馴れ馴れしい。 「ふゆち、お酒!」  亜季奈はそう言うと奈津帆が空のコップに注いでくれたビールを一気に飲み干す。 「私ね、仕事でミスしちゃったんだ」  亜季奈の呟きに、奈津帆は焼きそばを焼く手を止めた。 「やっちゃった・・・・・・って感じ」 「しゃーないわ」  亜季奈を一瞥すると奈津帆は再び手を動かす。 「ミスは誰にでもあるんやわ。そんなんでいちいち落ち込んでたら、体がいくつあっても足りんで」 「分かるけど・・・・・・」  奈津帆の言葉が正しいことは亜季奈自身が良くわかっていた。 「次から同じことをせんかったらえーねん」  奈津帆の言葉の一つ一つが亜季奈の心に突き刺さる。 「いらっしゃい~」  奈津帆が急に言葉のテンションを変え、入ってきたお客に挨拶する。 「そちらどうぞ」  奈津帆が案内したのは亜季奈の右隣の席。 「何しましょ?」  お客の目の前にお冷とおしぼりを置きながら、奈津帆が聞く。
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