第1章

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「・・・・・・、健康法や」  真夏の言葉に奈津帆はピンとくる物があった。 「彼氏できたな」 「なわけないわ」  即答だった。  真夏の態度を見ている限り、これ以上問い詰めても何も変わらないので、この件はスルーすることにした。  百貨店の催し会場。  亜季奈が店の奥から出てきた時、何か声が聞こえた。 「関西弁?」  彼女がそう断定したのには理由があった。  昨日お好み焼き屋で関西弁を話す店員に会ったからだ。  視線を店の前の商品に見入ってる二人組に移す。 「!!」  一人はどう見ても昨日会ったお好み焼き屋の店員だ。 「ふゆち」  自然と声が出ていた。 「あっ、昨日のお客さんや」  ふゆちと呼ばれた女性は声の発信場所に目線を移し、本人と確認しつつ言った。 「昨日スマホ間違えて持って帰ったんちゃうか?」  亜季奈が言おうとしていたことを、ふゆちと呼ばれた女性は先に言った。 「そうみたいなんです」 「ほなら今日、昨日と同じくらいに来て。間違えられた方もそれくらいに来るはずやから」 「ありがとうございます。はい、行きます」 「ほな」  ふゆちと呼ばれた女性はもう一人の女性を促し、去っていった。  和食『ひだまり』。  リーズナブルな和食レストランとして百貨店内では有名なお店である。 「なんや知り合いか?」 「せや、昨日来たお客さんやねん」  個々に注文した後口を開いた真夏に、奈津帆が経緯をかいつまんで説明する。 「ケータイ間違いか」 「まなっちゃんは絶対せーへん思うわ」 「やらかしたことはある」 「!?」  真夏のカミングアウトに驚く奈津帆。  ますます真夏と言う人間が分からなくなる奈津帆だった。
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