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磯原琉一朗は会社終わりでお好み焼き屋へ向かっていた。
早く自分のスマートフォンを返して貰いたい、その一心だった。
「あれ?」
この場所にあるはずのお好み焼き屋が見当たらない。
辺りを見渡したりしてみても店はない。
記憶は間違いないはず、しかし店がないので段々不安に駆られていく。
こういう時スマートフォンが役立つのだが、人のスマートフォンなので触ることはできない。
どうしようか迷いふと顔をあげた時ドンと体が何かに当たった、と思った瞬間、琉一朗の足が二三歩後退した。
「すいません」
当たったのは女性だった。
「こちらこそすいません」
琉一朗にも非はあった。
店を探す方に意識が集中していて、周りをよく見ていなかったのだ。
「何かを探していますか?」
その声に振り返るとさっきぶつかった女性がこちらを見つめている。
「お好み焼き屋を探していまして」
なぜだか分からないが、全くの赤の他人の質問に無意識に答えていた。
「お好み焼き屋ですか?」
「はい」
「名前は思い出せますか?」
「えっと・・・・・・」
女性に聞かれても店名がいまいち思い出せない。
「もしよろしければ、私が知ってるお好み焼き屋に一緒に行きませんか?」
女性の提案は嬉しかったが、違う店だと嫌なので丁重にお断りした。
「店の名前だけ、教えてください」
候補の一つにしようと女性から店名を聞き出した。
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