7人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと空を見上げると、白い雪がパラパラと降り始めている。
「僕ってダメですね」
女性と一緒に歩いていた琉一朗がポツリと呟く。
「ダメなのことはないですよ」
女性が足を止める。
琉一朗もつられて足を止める。
「車で来たのですが、もしよかったら家まで送りますよ」
そこは駐車場であり、数台の車が止まっている。
「あっ、はい」
琉一朗が返事をした時には既に女性はいなかった。
「あれ?」
あたりを見渡していると近くの車のエンジンのかかる音が聞こえた。
慌てて車に近づこうとすると車が動きだした。
「すいません」
車に乗り込んだ琉一朗は頭を下げる。
「住所、入れて下さいね」
女性が示したナビに琉一朗は住所を入れていく。
亜季奈は夜の街を歩いていた。
結局、今日も返してもらえなかった。
スマートフォン、もう電池切れたのかな。
私って不運だね。
どうしてこうなっちゃうんだろ。
考えれば考えるほど涙が出てくる。
死んじゃいたい。
女性の運転する車は夜の道を走っていた。
と前方に人影が。
女性が反射的にブレーキを床まで踏んづける。
琉一朗も思わず目を閉じる。
横断歩道を歩いていた亜季奈だったが、進行方向の信号を全く確認していなかった。
急に車のヘッドライトが迫ってきて、恐怖のあまり体にセメントを入れられたかのように固まってしまった。
私、死んじゃうんだ。
不思議と目が閉じた。
色々なことを走馬灯のように思い出していく。
車のブレーキ音が響いている。
最初のコメントを投稿しよう!