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塀に少女の背中を立てかけて座らせる際も、胸とかをイヤらしく触らないよう細心の注意を払った。
僕というやつはなんて紳士な男なのだろう。
自らの誠実さに思わず感動した。
少女が起きるまでの間、僕はオニギリを食べて待つことにした。
夜空を見上げているだけでは退屈と空腹は満たされないのだ。
もしゃもしゃと、ツナマヨの具が入った米粒の集合体を咀嚼する。
一つ目を食べ終え残りの一つに手をつけるべくビニール袋の中をまさぐっていると、隣にいる少女が目を覚ました。
「……? あれ、あなたなんで……」
「あ、おはよう」
時間的には明らかにおかしかったが、起きたばかりの人間にこんばんはというのも変な気がしたのでそう言った。
「……って、ちょっと、あいつはどこへ行ったの?」
スクッと立ち上がり少女は慌てて辺りを見回す。
「あいつ?」
「そうよ、あの刀泥棒」
「さあ、どっか行っちゃったよ。ところでさ」
さっきの何? そう訊こうとしたところ。
ぐうぅ。
そんな、お腹が鳴る音がした。
僕じゃない。
さっきオニギリを一個食べたばかりなわけだし。
周囲には僕の他には一人しかいない。……つまりはそういうことなのだ。
「えーと、オニギリ食べるかい?」
赤面して唇を噛みしめる少女に僕はそっとツナマヨのオニギリを差し出した。
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