第一章

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 しかし少女はそれをなかなか受け取ろうとしない。  遠慮しているのかな。 「鮭はないの?」  どうやら好みの具と違うことが気に食わなかっただけらしい。  しかし、この他には何もない。  ないものはないのだ。 「生憎、養われている身分だから贅沢ができなくってね。これで我慢して」 「……」  渋々といった表情で彼女はそれを受け取る。  人から恵んでもらうというのに媚びないこの態度。  なかなか大物を予感させる。  そう感じる僕はおかしいのだろうか。 「それで、あのさ。さっきの日本刀を持ったあいつ、何者なの? 君は一体どうしてあいつと戦っていたんだい?」  もしゃもしゃと口を動かし、オニギリを飲み込む少女の横顔を見ながら訊いた。  だが、聞こえていないのか、何も話してはくれない。 「ツナマヨあげたのに……」  僕はボソリと卑屈に呟いた。 「……あいつと戦った後は何だか無性に空腹感に襲われるのよ。きっと自分の限界を超える動きを繰り返すせいね」  急に早口で腹の音に対する言い訳みたいな解説をし始めた。  さっぱり意味が分からないけど。
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