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しかし少女はそれをなかなか受け取ろうとしない。
遠慮しているのかな。
「鮭はないの?」
どうやら好みの具と違うことが気に食わなかっただけらしい。
しかし、この他には何もない。
ないものはないのだ。
「生憎、養われている身分だから贅沢ができなくってね。これで我慢して」
「……」
渋々といった表情で彼女はそれを受け取る。
人から恵んでもらうというのに媚びないこの態度。
なかなか大物を予感させる。
そう感じる僕はおかしいのだろうか。
「それで、あのさ。さっきの日本刀を持ったあいつ、何者なの? 君は一体どうしてあいつと戦っていたんだい?」
もしゃもしゃと口を動かし、オニギリを飲み込む少女の横顔を見ながら訊いた。
だが、聞こえていないのか、何も話してはくれない。
「ツナマヨあげたのに……」
僕はボソリと卑屈に呟いた。
「……あいつと戦った後は何だか無性に空腹感に襲われるのよ。きっと自分の限界を超える動きを繰り返すせいね」
急に早口で腹の音に対する言い訳みたいな解説をし始めた。
さっぱり意味が分からないけど。
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