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席に着くと、妙にそわそわしながら大人しく座席に座っている斉藤が目に映った。
夏休み中に派手目にしていた髪は現在一学期同様の大人しめな茶色に戻っている。
斉藤は僕と目が合うと気まずそうに視線を逸らした。
何をこいつは過敏になっているのだろう。
僕が一人プールや一人遊園地を誰かにばらすことを恐れているのだろうか。
それなら安心していい。僕にはそんなことを話す相手はいないから。
やがて担任が教室に入ってきてホームルームが始まる。
どうせ熱心に聞く必要もないだろうとウトウトしながらほとんどをいい加減に聞き流す。
「じゃあ、入ってきてください」
担任が廊下のほうに向かってそう言った。
ああ、転校生が来たのかな。
ぼへっとしつつ興味本位で前を向く。
静かに扉が開かれ一人の女子生徒が姿を現した。
教卓のすぐ横で姿勢よく凛とした佇まいで起立している転校生を見た瞬間、僕のぼんやりとしていた頭がパッと冴えわたった。
長い黒髪を二つに結んだおさげに近いツインテール。
切れ長のきりっとした目。
紺色の北高のブレザーに身を包んだその少女は
「レ、レイちゃん? 嘘だろ?」
「いいえ、嘘じゃないわ」
彼女、長野レイは不敵に微笑んだのだった。
『追憶のアンクルソード』完
To be continued...?
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