第二章

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 僕は湯呑に手を出し、そっと中身の茶を啜る。  淹れたてなのか、まだ若干熱かった。  息を吹きかけて冷ましながら口に含む。  一方の少女は自らの湯呑には全く触れず、僕の姿をじっと見つめている。  まさか毒入りか……?  いや、まさかな。  え、ないよね、本当にそんなこと。  彼女の能面のような表情を窺っても、その答えを知り得ることはできなかった。  まあ、今のところ体に異変はないし。  遅効性の毒である可能性も残されてはいるが、多分大丈夫だろう。 「…………」 「…………」  お互い無言。空気が重いなぁ……。  彼女を室内で、明るいところで。  バットを持っていない姿を改めて見ると、昨日とは少し違った印象を受ける。  何というか、普通だった。  どこにでもいそうな女の子といった感じ。  いや、どこにでもはいないか。    平均以上に可愛いから。  そんな風にいやらしい目で彼女を分析していると、だんまりを決め込んでいた彼女が静かに口を開いた。 「で、なんであんなことしたの?」 「あ、あんなこととは?」  すっとぼけてみる。 「下着泥棒」  核心を突かれてしまった。 「……」
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