第二章

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「何か言いなさいよ」  鋭い口調で追及される。  誤魔化そうとしても無駄よ、と暗に言われているような気がした。 「えーと、それは。強くなろうと……」 「はぁ?」  彼女の眉が吊り上った。 「いや、だからですね。反社会的行動をとって、強い人間になろうと思ってですね」  しどろもどろしながらも、僕は行動に至った信念を正直に語ろうとする。 「意味解らないんだけど。不良になりたかったとか、そういうことでいいの?」 「ちょっと違うかなぁ」 「じゃあ誰かに命令されたとか?」 「いえ、僕の意思です」  彼女は顎に手を当て目を閉じ、黙り込んだ。 「昨日の今日でピンポイントに私の家へ下着泥棒に入る……。  偶然にしては出来過ぎているわね。  まさか私の後をついてきたの?」 「違う違う。それは偶然だよ。僕を信じてよ」  あらぬ疑いをかけられてはたまらない。 「下着泥棒の言い分を素直に信じるというのは少し難易度が高いわね」  駄目だ。  信頼感ゼロだった。  まあそれが妥当な扱われ方だろうけど。  とりあえず何か喋らなくては。  無言でいることは相手に不信感を抱かせる。  中身がなくても何か言う。  面白い冗談を言って明るく振舞い、相手につまらない思いをさせないようなトークをする。
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