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そうすればモテモテだと、だいぶ前に斉藤がニヤケながら語っていた。
あのいけ好かない野郎の知恵を借りるのははなはだ不本意であったが、全てはこのピンチを脱出するためだ。
背に腹は代えられない。
もっとも、今はモテる必要性は全くないのだが。
「君はここに一人で暮らしているの?」
「そうよ」
素っ気ない返事だ。
好感触とは言い難かった。
だが、僕はめげない。
相手に気に入られ、警察に突き出すことをためらわせる程度にまで親しくなる。
そしてなんとか許してもらい、見逃してもらう。
これが僕に課せられたミッションなのだ。
なのだが……。
「エへへ……」
ところが何も思いつかない。
卑屈に笑って誤魔化すことが精一杯。
所詮、元が根暗の僕には女子を楽しませるようなトークはできないのか?
やばい、この後どう繋げればいいんだ。
少女は眉をひそめ、何も言わない僕を怪訝な目で見ている。
このままではいけない。
だが、きっと大丈夫だ。
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