第二章

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 僕はこの数日間、生活のほとんどをギャルゲーに費やしてきたじゃないか。  自分を信じろ。  己の歩んできた道のりを思い出せ。  恋愛シミュレーションゲームは何のためにある?  そう、女の子と仲良くなるための模擬演習のためにあるのだ、多分。  シミュレーションってついてるし、きっとそうであるはず。  だから大丈夫。  自信を持てば人は変われる。  ここが正念場だ! 「いやぁ新鮮な出会いだよね、本当にこれは。  いや、間違いない。  下着泥棒から交流が生まれるなんてこの縁は大切にした方がいいよ、絶対に!」  吹っ切れた僕はとにかく喋りまくった。  意味なんか特に考えず、適当にペラペラ言葉を吐き出す。 「い、いきなり何を言い出しているの?」 「君、名前なんて言うの? 僕は吉川一輝」 「長野レイ……」 「レイちゃんか。うん、可愛い名前だ。キュートだよ! クールだよ!」  うろたえるレイちゃんの眼を見ながら、畳み掛けるように褒めちぎった。  普段は女子を前にすると押し黙ってしまう僕だったが、捨て身となり緊張という枷を外して開き直った今の僕に死角はない。 「あなた私を馬鹿にしてるの? そんなことはいいから、ベランダに忍び込んだ件について」 「レイちゃん、歳はいくつ?」 「……十六歳」 「そうなんだ! 僕も十六歳。高校一年生。一緒だね、奇遇だね?」
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