第二章

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「長くて気持ちの悪い言い訳お疲れ様。  でも心の中の悪魔に勝てなかったというのは言いようで、つまり欲望が理性を上回ったというだけの単純な話でしょう。  浅い比喩で遠回しに言わなくても、ただの犯罪動機よね」 「うぅ……」  紛れもない正論。  僕は唸ることしか出来なかった。  もはや形勢は圧倒的にレイちゃんの側に傾いていた。 「理性を保てず、衝動的な欲望を実行してしまった。あなたはただの犯罪者ではないの?」  レイちゃんは辛辣な事実を遠慮なく突きつけてくる。 「あぅ……」  ぐうの音もでないほどボコボコに論破されてしまった。  略してぐう凹だった。  もうダメダメだった。  これから警察に通報され、お巡りさんがやって来て、パトカーに乗せられて僕の人生はおしまいです。  お母さんお父さん。  至らない、親不孝な息子をお許しください……。  そんな感じで絶望に打ちひしがれていたのだが。 「まあ、今回は見逃してあげるからさっさと帰って頂戴。次やったら言い訳なんか聞かないで警察に突き出すから」  レイちゃんの発したその言葉に耳を疑った。 「え? 見逃してくれるの?」 「そう言っているでしょ」  レイちゃんの顔を見ても冗談を言っているようには思えない。  上げて落とす意地悪とかでもなさそうだ。  これはどういった奇跡だ?
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