第三章

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「あなたに物を貰う理由なんてないと思うけど」 「ほら、昨日迷惑かけたし。そのお詫びみたいなものだよ」 「あなたそれ、もしかしてナンパのつもり?」  レイちゃんはけったいな物を見る瞳で僕を見る。 「えっ? さあ、どうなんだろう?」  別に男女のアレヤコレヤ目当てでちょっかいをかけているわけではないけど。  お近づきにはなりたいと考えているのは事実なわけで。  ぐるぐるぐるぐる。  頭の中で考えが錯綜する。 「どうしてあなたが疑問形なのよ……。  何でもいいけど、お菓子ごときで私が釣れると考えるなんて安く見られたものね」 「でも、これ結構高いよ」 「そういう問題じゃないの」 「そうなのか……」  高級菓子を用いてもレイちゃんの心を開く鍵にはなりえなかったようである。  僕が手提げに菓子をしまおうとするとレイちゃんは箱を掴んで引き留めた。 「…………?」  怪訝な目でレイちゃんを目視する。 「貰わないとは言っていないでしょ」 「え? でもお菓子じゃ釣られないんじゃ」 「そういう問題じゃないの」
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