第三章

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 そんなもの僕だって分かるか。  だが、上手く説き伏せる言葉が思いつかないのだから適当な話題を振って誤魔化すしかないのだ。  吹っ切れモードに入った僕は覚悟を決めた。  気合を注入すべく某力士のように頬を自ら引っ叩く。  そんな僕を見たレイちゃんは僅かな間だけ眉をひそめたが、すぐに何事もなかったようにレモンティーを飲む。  どうやら僕が奇行に走るのはもう致し方ないことであると認知されてしまったようである。  なんかもの悲しい。  けど泣いてなんかいられない。 「そういえばさ……」  それから僕は内容があってないような小話、ウンチク披露、その他ちょっとだけ笑える失敗談等々をくっちゃべったりし、レイちゃんの気を協力云々の話から必死に逸らした。  最初は戸惑いを見せていたレイちゃんだったが、そのうち彼女も慣れてきたのか、僕が繰り出すしょーもない冗談をはいはいとすまし顔で受け流すようになった(これって打ち解けたと解釈していいのだろうか)。  まあとにかく、そんな涙ぐましい努力のおかげで僕はレイちゃんがデザートを食べ終えるまで彼女の口から結論がこぼれ出すのをどうにか防ぎ切ったのだった。
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