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一万円札を差し出して会計を済ます。
質量的には増加を見せたが金額的には減退するという悲しい逆転現象が起こった財布をズボンの尻ポケットに仕舞い込む。
やれやれ、結構痛い出費だったな。
だが窮地をしのいだ充足感から、僕の心は穏やかだった。
そういえば、ほとんど初対面の女子相手にここまで軽快にトークが出来たのは過去の自分の記憶と照らし合わせてみても史上初の快挙と言っても過言ではないのではなかろうか。
ひょっとしたらこれは夏休み中にのめり込んだギャルゲーのおかげかもしれない。
なんせギャルゲーは恋愛シミュレーションゲームと謳ってあるからな。
事実がどうかは知らないが、とにかく思い込みの強い僕はそう解釈することでなんかスゴク納得した。
「でさ、さっきの僕が手伝うって話だけど。どうかな?」
そっと顔色を窺って再度申し出てみる。
レイちゃんの返事を手に汗握り緊張しながら待つ。
気分は一世一代のプロポーズの返答を受け取る心境だ。
「……分かったわよ。でも巻き込まれて死んじゃっても責任はとらないんだからね」
腕を組み、半眼で僕を見ながらレイちゃんはそう言った。
「馬車馬のように働いてもらうから。そのつもりでね」
黒い笑みを浮かべるレイちゃんを見て僕は思った。
……ひょっとして早まったか?
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