蝉のいる季節

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 そのまま向かいのコンビニに行き、何かつまめるようなお菓子とジュースを買って戻ると、部屋の隅で黒いオーラを放ちながら体育座りをする短パン小僧が目に入ってきた。  何だよ、この人面倒くせぇな。 「ほれ、飲み物を買ってきたから、まずは水分補給しろ」  ペットボトルを短パン小僧に向けて転がすが、反応は帰ってこない。  そのまま放置することにした俺はお菓子の袋を開いて、今度こそ冷凍庫から凍った水の入ったペットボトルを取り出した。  そして、それを脇の下に当てながら振り返ってみると、さっき転がしたペットボトルの中身が綺麗になくなっていた。それほど喉が渇いていたようだ。 「悪かったって。謝るから機嫌直せよ」 「…ジュースがうまかったから、許す」  謝罪の言葉を投げ掛けると、未だに体育座り状態の短パン小僧からこの言葉が返ってきた。  だが、それきりで後は沈黙が続くだけだった。  みーんみーんみーんみーん…  相変わらず、蝉の鳴き声が部屋の中に響いている。  お菓子をポリポリ食いながら、俺は短パン小僧をチラリと見てみる。体育座り状態は解けたが、相変わらず部屋の隅から動かない。  何かやりにくいなぁと思っていたら、不意に短パン小僧から声が聞こえてきた。 「あの、さ…もう大丈夫なの?」 「え?」  あまりにも不意打ち過ぎて、思わず間抜けな声を漏らしてしまった。  大丈夫の意味を数秒間考えた俺は、部屋の暑さのことだと解釈して言葉を返すことにする。 「大丈夫って、何が? 暑さか? 今すぐにでもマッパになりたい気分だ」 「止めろよ。お前、実は裸族だったのか…そうじゃなくて」  そこで言葉を切った短パン小僧は、何か言いたそうな顔をしていたが、だんまりを決め込んでいる。 「何だよ? 何でも言ってみろよ。別に気にしねぇよ」  今更だといった風に投げ掛けると、短パン小僧は小さく笑いながら「そうか」と呟いた。  そして、たっぷり間を開けた後に、短パン小僧は俺に疑問をぶつけてきた。 「今まで片想いだった彼女のこと…」  その一言で全てを理解した俺は「あぁ」とだけ返した。  コイツはふざけた格好をしているが、俺のことを案じてくれている。だから、彼女のことについても聞くべきか迷ったのだ。
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