1人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫、もう立ち直ったから」
「で、でも…あんなに落ち込んでいたから、そのままどっかに行ってしまいそうで怖かったんだよ」
「大丈夫。だいじょーぶ。アレくらいで行方不明になるわけないだろ」
笑いながらおちゃらけてみると、短パン小僧にいつもの笑顔が戻ってきた。全く、本当に面倒くせぇ奴だ。
今回は、誰が悪いかとかそんなんじゃない。ただ、単に運が悪かっただけなんだ。
「でも、本当に悪かったよ」
「謝んなよ…今まで片想いだった子に告白した時は、まさかお前の彼女だったなんて想像もつかなかったし」
「でも、もう気にしてねぇから」と笑いながら、短パン小僧にお菓子を差し出すと「食欲がない」と断られた。
何故か顔が引きつっていた気がするが、とりあえず俺が全部食べることにする。
みーんみーんみーんみーん…
蝉の鳴き声は相変わらず響いているが、時間が過ぎたらその鳴き声も聞けなくなるのかと思うと、少し寂しい気もした。
「……ありがとうな」
「いや、こちらこそ…ごめん」
「良いって、次の恋を探せばいいんだし。…俺の方こそごめんな」
「君から謝られるようなことなんてないよ」
「いや、お菓子の方で…これ、ハバネロ味だし」
「あ、そっちね…ハバネロ味なんて買ってくるとは思わなかった」
「いや、単なる俺のわがままだよ。悪かったな」
「いいや……今度は塩味でも」
「おうよ」
いつもの調子でやり取りをした後、再び財布を持って暑い外に飛び出した俺は、今度は虫捕り網も買おうかと考えながら、向かいのコンビニに向かった。
最初のコメントを投稿しよう!