蝉のいる季節

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「大丈夫、もう立ち直ったから」 「で、でも…あんなに落ち込んでいたから、そのままどっかに行ってしまいそうで怖かったんだよ」 「大丈夫。だいじょーぶ。アレくらいで行方不明になるわけないだろ」  笑いながらおちゃらけてみると、短パン小僧にいつもの笑顔が戻ってきた。全く、本当に面倒くせぇ奴だ。  今回は、誰が悪いかとかそんなんじゃない。ただ、単に運が悪かっただけなんだ。 「でも、本当に悪かったよ」 「謝んなよ…今まで片想いだった子に告白した時は、まさかお前の彼女だったなんて想像もつかなかったし」  「でも、もう気にしてねぇから」と笑いながら、短パン小僧にお菓子を差し出すと「食欲がない」と断られた。  何故か顔が引きつっていた気がするが、とりあえず俺が全部食べることにする。  みーんみーんみーんみーん…  蝉の鳴き声は相変わらず響いているが、時間が過ぎたらその鳴き声も聞けなくなるのかと思うと、少し寂しい気もした。 「……ありがとうな」 「いや、こちらこそ…ごめん」 「良いって、次の恋を探せばいいんだし。…俺の方こそごめんな」 「君から謝られるようなことなんてないよ」 「いや、お菓子の方で…これ、ハバネロ味だし」 「あ、そっちね…ハバネロ味なんて買ってくるとは思わなかった」 「いや、単なる俺のわがままだよ。悪かったな」 「いいや……今度は塩味でも」 「おうよ」  いつもの調子でやり取りをした後、再び財布を持って暑い外に飛び出した俺は、今度は虫捕り網も買おうかと考えながら、向かいのコンビニに向かった。
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